定めの夜/ホロウ・シカエルボク
 

ダイナーに置き去りにした昨日の心は椅子の上で干乾びていた、埃を掃うように手で落として腰を掛けると今がいつなのか分からなくなった、せめて注文は違うものにしようと思ったが結局同じものに落ち着いた、なにかした自分でも理解していない理由があってそれが選ばれているのだろう、人間なんて自分のことすらろくに知りもしていない生きものなのだ、マスターは俺の注文を聞くと、そうだと思ってたという調子で黙って頷いた、彼もまた逃れられない魂としてそこにいるのだという気がした、料理を作り始めたころには、きっとこんなうらぶれた店に落ち着くことなんて考えても居なかったはずだ、ソニー・ロリンズが小さな音で流れていたけれど、彼の
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