アメリカ/藤原絵理子
 
大好きだったシンガーが死んだ


ピッツバーグからグレイハウンドに乗って
何かを探しに行った時代は
まだ探すべきものがどこかにあった
今はもう
クリック一つで何でも見つかると
真実かどうかなんて関係なく
探しに行く必要なんてないと勘違いしている


ターンテーブルが回っている
レコードの溝に潜んだ歌を
古き良き時代の真空管が拾い上げて
サウンドが満ちる店の片隅で
移民の彼女は請求書に埋もれている
毛嫌いされているのはわかっているけど
日々の暮らしが良くなるのが先決だ


違う候補者を支持する人々が
食事を共にして祈る
どっちに転んだって
自分たちには
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