彩の瘡蓋/ホロウ・シカエルボク
 

色が褪せてしまった花びらが強く冷たい風に煽られてあっけなく散ってゆく、それはそんなに大きな花じゃなかった、それはそんなに美しい花ではなかった、それはそんなに心を掴むような花でもなかった、ただ俺の座っている公園のベンチの、木々が植えられたスペースを丸く囲うブロックの隙間から逃げるように生えた花に過ぎなかった、俺はたまたま気付かずその正面に腰を下ろしただけだったのだ、それは数秒で終わり、俺は水を飲んだ、そうして、さっきまで花だったもの、埃のように散って短く刈り込まれた芝の上に散った花びらを眺めた、それはこの世でもっともわかりやすい運命の形だった、俺は静かに花の死を受け止めた、ちょっとした縁ってやつ
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