パントマイム/マッドビースト
サラリーマンの振りをする
花売りの振りをする
学生の振りをする
独裁者の振りをする
朝だからと
眠そうな顔をして嫌そうに
でもちゃんと用意されている理由に安心して
靴紐を結ぶ
用意されている目的地に向かって電車に乗り
夕方には逆方向の電車に乗って理由に戻ってくる
もしくは目的地は理由である
疲れている振りをする
食事をする振りをする
エンターテイメントに興じる振りをする
眠る振りをする
あとで空腹になると困る とか
最近の流行だ とか
明日朝はやいから とか
本質的でない欲求が
欲求と言うより要求が
突きつけられている
社会のそこかしこから
観客ばかりがいるホールで
お互いがお互いを見物し合っている
喜びや興奮が欠落している毎日は
無音映画のように平穏だ
白黒の景色の中をスローモーションで生きている
本質は不在だ
夏が来てハイビスカスが咲けば
革命的な色彩にみんな砕けてしまうことだろう
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