もうね、あなたね、現実の方が、あなたから逃げていくっていうのよ。/田中宏輔
そんなにすらすらと
と思って、びっくりした。
「そかな?」
マスターが
「日知庵は忙しかった?」
「知らない。」
と、ぼくが言うと
湊くんが
「まあまあじゃないですか。
満席になったときもありましたよ。
ずっと満席ってわけじゃなかったですけど。」
「えっ、そなの?
ぜんぜん見てなかった。
まわりなんか、ぜんぜん気にしてなかったしぃ。」
マスターが
「ほら、やっぱり、見たいとこしか見てないのよねえ。」
で
「ふううん、かもね。」
と言うぼく。
「The Wasteless Land. の?って
いままで出した詩集のなか
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