もうね、あなたね、現実の方が、あなたから逃げていくっていうのよ。/田中宏輔
おもしろそうなんだけど。
それだけで
何年もかかりそう。」
というところで
大黒のある路地の前にきた。
廃校になった小学校の前にある路地の奥だ。
ふたりは狭い路地を通って大黒に入った。
「前にも、ここにきたよね?」
「いえ、はじめてですけど。」
「えっ?
そなの?
ほんとに?
前に
荒木くんとか
関根くんとか
魚人くんとかときたときに
いっしょにきてない?」
「はじめてですよ。」
「ええっ!」
マスターが湊くんに店の名刺を渡す。
「はじめまして、大黒のみつはると言います。」
「ぼく、シンちゃ
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