疎林/山人
目が覚めると異様なほど口中の渇きを感じることがある。一滴ずつ唾液腺から舌で唾液を促し、口中の渇きに唾液を塗りたくる。いったい俺の体はどうなってしまったのだろうか?そんなことを最近感じる。
鏡の中の俺は埴輪のような顔で、皮膚は角質化し、形が既に決められた大きな皴が頬にいくつか刻まれ始めている。典型的な老人顔がそこにあった。それを認めたくないというジレンマの中で鏡と対峙していた。
すでにいくつかの季節が過ぎ、冬へのいざないが始まった。濡れそぼった魂はいくぶん湿気を除去され、皮膚の外側に出来物のように突き出してきている。おだやかにあきらめは成虫になりかける虫のように少しづつ成長し始めていた。
とある日、俺は疎林を眺め息を吐いていた。隣人の内臓を引きずり出したくなる感情を押し殺し、得体のしれない生き物の蛹のように、音をたてぬように呻いていた。黙って、みんな居なくなればいいのに。十分秋と呼べるにふさわしい風が疎林に吹き抜けていった。
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