数式の庭。原型その1/田中宏輔
 

力強い息なのだろう

その息が枯れぬよう
ぼくは、ぼくである庭にこころを砕いた
ぼくは、ぼくである庭に願った
ちょうどよい日ざしと雨が訪れますようにと

でも、訪れたのは
日照りつづきと
草をもなぎ倒す嵐の日々
それでも
数式の花は咲く

なんと、かすかで
力強い息だろう
ぼくは、ぼくである庭に祈る
たとえ、どのような日でもよい
訪れよと


*


庭に出て
背中を伸ばした。
部屋にこもりきりで
ずっと本を読んでいて
疲れていたのだ。

花のひとつに手をのばして
マクローリン展開した。

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