弁償?/森 真察人
 
本当に、人を愛せましょう。?

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或(あ)る朝のことでありました。僕は雲の輪郭を追っておりました。追いきれませんでした。輪郭の中に輪郭があり、その中にまた輪郭がありましたゆえ。

或る昼のことでありました。僕は木枝の先を追っておりました。追いきれませんでした。枝は分かれた先で分かれた枝を成し、その先でまた分かれておりましたゆえ。

或る夜のことでありました。僕はあなたを追っておりました。追いきれませんでした。あなたとの愛しい思い出の内に愛しい思い出があり、その内にまた愛しい思い出がありましたゆえ。

勿論(もちろん)、いまのあなたも追いました。同じことでした。あなたとの時間の内には、無限の愛しい時間があるのみでありました。

その無限の、極限の彼方のその向こうに、僕の愛するかのそのものが、あるのでしょう。

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