風のない夜明け前の朝/
山人
苦いコーヒーを啜る
昨日の残滓を回想しながら
黒褐色の液体が食道を滑り胃に落下していくのを感じていた
かすかな期待が薄紅色にときおり光り
羽毛を生やした生き物のように少しだけ微動する
声にならない声が熟成を開始した季節の空間に落ちてゆく
風が無い夜明け前の朝
黒点はしずまり眠っている
見えない蝶を
ぼやけた視線で追いながら
朝はまた眠りから覚めている
戻る
編
削
Point
(4)