吊られた男/りつ
私に相応しいのは「節制」のカードだと思ってた
とおい昔に
愛した人が二人いる
一人は
遠く離れて住む人で
初めて愛した人だった
寂しい人だった
側にいられない私は
「誰でもいい!私じゃなくてもいい!彼が幸せになるなら誰でもいい!」
と祈った
祈りは叶い
彼は側にいられるひとと結ばれた
私は独りで少し泣き
(良かった…)
と思った
一人は混沌を共に駆け抜けた相棒で
私をとても理解してくれた人だった
彼には一緒に住んでるひとがいた
だけど彼は彼女に嘘を平然とつき
私とも会ってくれた
その彼から
ある日突然メールが来た
「もう会えない。ごめんなさい」
ひたすらに理由を聴く私に
ひたすらに謝る彼
納得できないまま別れる形になり
私はひとつき毎日哭いた
それでも彼とは連絡を取らなかった
そして
二度あることは三度ある
私の真の愛には自己犠牲が必要だと
最初から解っていた
私のカードは
最初から
「吊られた男」のカードだった
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