メモ(主に映画についてのこと)/由比良 倖
 
暇つぶしに過ぎないと思っていた。


 映画は人の感覚や感情を喜ばせるだけのものではないのだと、タルコフスキーの本で初めて知った。
 『映像のポエジア』は難解だけれど、そこに書かれた言葉に通底する彼の信念は、……映画とは、やはり音楽や文学と同じく、映像を媒介として、監督と観客の、あるいは観客同士の、記憶の底で死にかけていた孤独な感覚を否応なく掘り出し、それを強固に繋ぐものであるし、それ以上に、映画製作とは、二度と再現不可能な「今」というリアル、おそろしい程に孤独な、全ての感覚が剥き出しになって、「これが現実なんだ!」と気付いて愕然とするような、いつもの自分がいかに寝ぼけていたかが分かるよ
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