指先の足跡/ホロウ・シカエルボク
 

瞳孔に刻まれた光景は必ず陽の当たらない場所だった、建物に張り付くように生え広がった羊歯、身を屈めで様子を窺う野良猫、酔っ払いの小便の臭い、行場を失くして蓄積する湿気、誰かが捨てて行った悲しみの名残、ボロボロのスポーツ新聞、壊れたイヤホンが奏でている音楽は「暗い日曜日」かもしれない、俺は大豆で出来た健康食品を頬張りながらそいつらの横を歩き過ぎる、猫はほんの少し身を乗り出して、「こっち来ないのかよ」とでも言いたげな顔をする、俺は悪いね、という感じで軽く手を振る、わざわざ見慣れ過ぎた場所で歩みを止めようなんて気には到底なれそうにないんだ、まだ何も知らない、打たれ弱い誰かを探しなよ、仲間を必要とするに
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