百行詩。/田中宏輔
 
ていないかそっくり同じかのどちらかである

九十一行目はおびえている
九十二行目はつねに神経が張りつめている
九十三行目は睡眠薬がないと眠れない
九十四行目は神経科の医院で四時間待たされる
九十五行目はときどきキレる

九十六行目はここまでくるまでいったい何人のひとが読んでくれているのかと気にかかり
九十七行目はどうせこんな詩は読んでもらえないんじゃないのとふてくされ
九十八行目は作者にだって理解できていないんだしだれも理解できないよと言い
九十九行目はどうせあと一行なんだからどうだったっていいんじゃないと言い
百行目はほんとだねと言ってうなずいた

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