百行詩。/田中宏輔
 
折れるまで曲げること
六十四行目はあきらめること
六十五行目はたたること

六十六行目は揮発性である
六十七行目は目を落とした瞬間に蒸発する
六十八行目ははずして考えること
六十九行目のことは六十九行目にまかせよ
七十行目は他の行とは分けて考えること

七十一行目は正常に異常だった
七十二行目は異常に正常だった
七十三行目は正常よりの異常だった
七十四行目は正常でも異常でもなかった
七十五行目は異常に正常に異常だった

七十六行目は七十八行目を思い出せないと言っていた
七十七行目は七十七行目のことしか知らなかった
七十八行目はときどき七十六行目のことを思い出して
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