下野/
田代深子
今さら 涙も惜しまず流すまま
走り降り 衆生の群に身を擦れば におう息もて
さだかならず足の ほつれるまま 下へ
下へと
冥く虚空の透ける蒼日天を背に負い 土へと
走る俺のうしろを 鼓をうち鳴らし見送ってくれ
ともがら
めぐりきた この日 駈け降りる石くれの勾配
巡礼衆生の群を掻き分け ひたすらに降れば
甘露の香もうすれ涙は乾き去るだろう
額は蒼く透け 知らず頬笑み 足は土をたたく
たたく
2005.5.22
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