紅の涙/蝶番 灯
昨日流行の口紅を買ったら
今日の夢に
同じ色の血を流した兎が出てきました
兎は言うのです「汚いね」と
私は唇を拭う 白い袖に付着する 紅の色
兎は言うのです
「それは僕の血の色です」
確かにあの女優の唇の紅は綺麗だったはずだったから
私は迷わず手に取って
確かのあの女優は「この紅は薔薇の紅」と謳っていた
私は迷わず信じ込んでいた
私は只怯えて言うのです
「この紅は薔薇の紅」
兎は言うのです
「その紅の使われた数だけ兎は死んだのに?」
眼を 私は 瞬かせた
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