とある夏の終わりの風景/秋葉竹
『じいちゃん、海をとってる』
小魚を掬い上げている
お爺さんをみていた
3歳くらいの女の子が
そんな言葉をたどたどしくこぼした
そろそろ帰ろうかと
ビーチで今日一日の後始末をしていたとき
そんな言葉が風に揺られて届いたものだから
僕は
沈む夕陽を背景にして
陰絵のように佇んでいる2人の姿をみた
お爺さんはバケツの中に
サッと『海』を入れて
その女の子に
バケツを覗かせていた
『おとと、だよ』と
魚のことを『おとと』という
子ども言葉で呼んだ彼に
その孫娘さんはまとわりつき
『おとと、おとと』と
キャッキャ、キャッキャ、と
昼間の海よ
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