羽(加筆した結果、散文に投稿することにしました)/パンジーの切先(ハツ)
心深い人でない祖母に話すかを悩んでいると、向こうが先に口を開いた。
「そや、あんな、さっき寝てたら、おじいさんが夢にでてきてな、さきちゃんを頼むて。もうさきちゃんも、立派な大人になったんに。おじいさんも心配性やねえ。あたしの心配をせんかい、と思たわ」
私が何も言えないでいる一方で、祖母は、言いたいことを言ってすっきりしたのか、菓子盆からとった鳩サブレーの粉をぼろぼろとこぼしながら食べている。そしてそれに対して母が、「もう、もっとゆっくり食べて」と呆れている。それを見るにつけ、生きている人間とは、こうやって同じものを食べることも、会話も出来るのに、死んだ人とは、もう何もできないんだろうと思った。何を思っていようと、もう私たちなが、祈りを通してしか繋がることができない。無数の羽のようなもので、私たちは隔てられてしまっている。私はキッチンに行き、皿を取り、黄色い缶から鳩サブレーを数枚取り出すと、皿に乗せ、せめてもと、仏壇のある部屋へと向かった。
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