詩で何かを救えると信じること/ねことら
心は揺れる。いつも頼りなくて、大嫌いだ。心。
心のことを書いている。
ちりちりとした火に焼かれる日々のことを思う。関わったり、失ったり、人として生きることの苦しさと、辛さと、そのたびに乱れ、傷ついている、鋭さのことを。
つらく深く沈んだとき、瞳に映る水の色を想う。とても青く、澄んで、いつか通り過ぎ、失った自分の細部のことだと知る。
何もかもちっぽけな言葉だ。でも何かを救いたい。言葉で、自分自身を救えなくても、たった一つの何かを救いたい。
詩なんて書きたくなかった。
書きたくて書いたんじゃなかった。
いつの間にか書いていた。
これからもずっと書き続けてしまう。
いつも詩のことを考える。
こんなにも言葉のことを考えてしまう。
生きて、考えて、書いて、伝えて、
これでいい、と肯定したいわけじゃない。
詩で何かを救えると信じているわけじゃない。
でも詩で何かを救えると信じたい。
誰かではなく何かを、言葉を介して、届こうとする距離の、最も遠い地点まで
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