見つめる声/ただのみきや
 
わたしは見た
立葵がゆれるのを
風の仕草を想いながら

わたしは見ている
だが今のものとは違う
ずっとむかし
でこぼこ道の端
夏草から抜きん出て
こちらを向いた
斜陽のせいか
どこか伏し目がちの
ちいさな顔の並んだ
あの花
わたしの幼心の卒塔婆
血のように赤い花びら
平らに裂いて
おでこや鼻に張りつけた

夕暮れの回らない風ぐるま
置き去りにされ
うす闇に暗く燃え残り
今もわたしを見つめている
あの夏の立葵


目はガラス玉
すべて獄屋に閉じ込めて

風はわたしの外に吹く
わたしの窓は閉じっぱなし
時は厚みを増すばかり

風がことば
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