水精?/本田憲嵩
 
なる。そのまま水の中へととても穏やかにふたりは沈みこんでゆく。そうしてまたしても浮力がはたらいて再び海面へと浮き上がって、再び高楼のような幻となる。それをなんども繰りかえしてゆくうちに、ついにそのまま水の中に居る。やがて水の中に射し込むまばゆい光が視えはじめる――。
さわやかな朝、やさしいきみはあまやかな声の中に居た。水のせせらぎの癒しにも似た音色で、きみは水で形成されたうつくしい水精(ナンフ)だった。



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