怪談/ホロウ・シカエルボク
放置された骨組みだけの車のそばには細やかな花が咲いていた、二十年も前にそこで中年夫婦の心中があったのだと聞いたのはつい最近のことだった、シートが二つしかない、クラシックカーのようなシルエット、車種を特定するにはダメージが深過ぎた、車ごとガソリンまみれにして火をつけたらしい、市街地からほど近い山の、国道から少し離れた山頂へと向かう道、その脇に車は長いこと放置されているらしい、俺は散歩のついでにそいつを見物に来て、いまこうして見下ろしている、馬鹿みたいに暑い日で、立っているだけで蒸し焼きになりそうだった、スポーツドリンクを飲みながら上り続けた俺は一休みがしたかったが、さすがにクッションを失くした焼
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