それから僕に必要なものは/由比良 倖
 
それから僕に必要なものは 一片の紙
魔法の杖 空を飛ぶ泉
風 悲しい匂い
屋根を削るための斧

空だけが 静かに齢をとっている

多分僕に必要なものは
一片の斧と 花の匂い
ピンクの月
風 ラズベリー色の
雲ぎれ

傷付き続けること
僕の唯一の美徳と
青く溺れ続けること

こころ ころころ ころがって 空に

屋根の上を 逆さまに飛ぶ
唯一な心の幽霊たちと
憂鬱な葉っぱをみんな塗りつぶしちゃった君の
黒くなった細い指さき
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