Sweet Thing。/田中宏輔
 
人の詩「反射光」の一部、終わりの方の部分であるが、共感覚、あるいは、複合感覚と呼ばれるものの一例である。しかし、詩人が所有していた自身の詩集のこの詩が書かれてあるページには、ルーズリーフの一枚を半分にして切ったものにメモ書きして、つぎに書き写した文章が挟んであった。


 あの湖面の輝きは、たしかに音を発していた。こころで、はじめピチピチ、プチプチとつぶやいていたら、じっさいにあとになって、まるで湖面の上で光が蒸発しているように見えて、その音がピチピチ、プチプチと聞こえてきたのだが、詩にするとき、へんな常識を働かせて、光だから、チカチカでないとおかしいと思い、詩集では、そう書いたのであるが、
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