Sweet Thing。/田中宏輔
くはきみの身体を抱きしめた。胸を離すと、きみは目を瞬かせた。振り向くと、湖面に銀色の光が弾け飛んでいた。チカチカと弾け飛んでいた。まるでストロボライトの煌めきのように弾け飛んでいた。ぼくは、きみを抱いて飛び込んだ。
湖面で蒸発する光の中に。
『ゲイ・ポエムズ』(思潮社オンデマンド・二〇一四年)では、
口のなかに残ったオイルの味。きみの汗が入り混じったオイルの味。鳶色の波間を浮き漂う水藻の塊。ぼくは、そいつを引っつかんで、きみの胸に投げつけた。目をむいて、払いのけるきみ。その仕返しに、浮き輪を投げ返すきみ。きみの投げた浮き輪は、ぼくの頭を飛び越えて湖面に落ちた。きみは
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)