霧の朝/山人
 
未だ幼木の胡桃の木の後ろには籾乾燥施設があって
霧はそれらを囲むように包んでいる

疲労という疲労は
体のあちこちに固形物のようにしこりとなってとどまり続け
筋肉や腱を蝕んでいるような気がする
様々な事柄は乱雑に散らかり、視線の先に蹲っていた

三〇年前の過ちが人骨を作り、時間を暴食した
今あるのは、何も無く
殻の人体と陽光をあきらめたか細い樹木のような生

ときおり、川魚は勢いよく脳の中を泳ぎ
やがて疲れては浮かんでいる

冷たい苔が、広く広がる廃田で目を放牧する
雑草はただ
哀しみの中で生を貪っていた
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