アンジーのために/秋葉竹
アンジーがみずから
帰り来る月夜の吸血鬼に
その白く細い首を
差し出し
その瞳には歓びの涙が浮かんでも
固く結んだ真っ赤な唇から
甘やかな夜の声が漏れ堕ちたとしても
アンジーのために
云っておかなくてはならないのは
一夜の真夏の夢をみた聖女の口紅の名残
そんな危うい香りや
忘れ去られるべき化生の姫の虚ろな無垢
その胸にみえるちいさな震えがあり
夜を越せないほどのキスの嵐に溺れても
アンジーのために
けっして忘れてはいけないのは
黒く塗り潰された青い空と
吸血の姫の初めて芽生えた青い炎とが
断れるわけのない眩い誘惑に逆らえずに
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