葬夢/ただのみきや
大気の芯はつめたく溶けた硝子で出来ている
濃い影に瞳を浸し
耳は遠い過去でボートを漕いでいた
死んだ男の携帯番号を消していないのに気がついた
やせっぽっちの若造のまま逝ったやつ
からめ ほどき またからめ
くりかえし くりかえし
色味したたる混濁を平らに描き出す
澄んだ時間に静かに溶け ゆっくりと
交わって 混じり切らない 記憶の絵具
踏みつぶされた刹那閃光眼裏かっ切って
漏れ出したいのち ビビットカラー
いままで書いたすべての詩を端切れに変え
花の代わりに詩句で満たした棺の中
蝶の翅のような青い炎に巻かれる夢を見る
世界は死者の夢の中に浮かぶ胎児である
(2024年6月30日)
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