真白き夢/ひだかたけし
 
いかにもやはらかな
おくるみに包まれ
眠る赤子の真白き静かさ

 もう逢わないわ

そう言う女の声音
記憶に深く刻まれた声、
相手を温たかく包み込む
少し低めのトーン帯び

 もうあわない

響き生々しく深く
いつしか逃げ出す赤子、
段ボール箱の奥へ奥へ

え? なんでっ なんで?

黒々とした固定電話眼差し
受話器を耳に当てたまま
寝床で目覚める私 、

あったかくかなしい 
かなしくあったかい
切なさ抱えながら、

え? なんでっ なんで?

反復される音声ヒビキ内底から
不思議に真白き余韻、
既に始まっている一日の時に
静かな波紋幾重にも拡げ揺れ広がる

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