Supper’s Ready。/田中宏輔
 

 朝、通勤電車(近鉄奈良線・急行電車)に乗っているときのことだ。
 新田辺駅で、特急電車の通過待ちのために、乗っている電車が停車しているという、車掌のアナウンスの最後に、
 「ふう。」という、ため息が聞こえた。
 まわりを見回しても、だれも何事もなかったかのような感じで、居眠りしていたり、本を読んだりしていた。
 驚いてまわりに気づいたひとがいないかどうか見渡しているのは、ぼくひとりだけだった。
 とても不思議な感じがした。
 ぼくは笑ったのだが、その笑い顔はすぐに凍りついた。
 だれも笑わないときに、ひとりで笑っているのは、おかしいと思ったのだろう。
 ぼくは笑えなくなって、顔
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