ゆううつ/由比良 倖
ずうっと昔、たしかに地上に生きていた誰かの物語を考えてた。白いベッドがあって、船みたいな冷たい影が過ぎていく。あるいはとても未来、そこは冬でもなくて、どんな季節でもない。まだ誰も叩いたことのないタイプライターが、樹々のあいだに並んでる。夕方には届かない。守衛は眠ってる。電線の巻かれた時計たちは、私が逆回しした。
電子の笛の音、並んで泳げない、魚の水槽、中の水、
ゆううつ、
(死の原因はその頃聖書の中では幸福な月曜日だったレゴブロックの果樹園、)
「私、みんな説明書で読みました、昔はこんなに膨らんでいた、
「ばらばらな曲線が内蔵されていた、
「靴の数よりも多くの死が歩いていた
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