四千七百四十五日/ただのみきや
 
風が立ち止まると
その樹は息絶えた
葉はみなとけた
地に届くこともなく
夢の中のおたまじゃくしが
絵具のパレットから拭い去られるように

朝は被膜に覆われ
影はみな死産の仔
へその緒がついたまま
オブラートの中で誰かの本音がもがいていた
姿を見せない鳥の声だけが石化して危険
きみは阿片みたいに時をとかす
わたしからは中吊りのまま喜んでいる
女の腰骨の匂いがしただろうか

定められた正しい輪郭から
色は滲んではみ出していた
病院船に降り立った無数のアホウドリ
造花で飾られた古の母たちが
甲板の裂け目に集まって絵筆を洗っている
血は水へと変わり
上流へと誘う
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