閃篇5 そのご/
佐々宝砂
ら私はいま生きています。
5 落下
古めかしい塔を登りきり、手すりを乗り越えて落ちる、ひゅんと背筋が冷たくなるような落下の感覚、でも落下の衝撃はない。衝撃がないことに安堵して覚醒し、自分が布団で寝ていることに気づく。以前はそんなことがよくあった。ミオクローヌスというのだと思う。寝入る前にもよく落下の感覚があった。今はない。夢の中の私は落ちるところまで落ちたのでもうこれ以上落ちないのだろう。あの落下の感覚がなつかしい。
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