冬眠/由比良 倖
体は丈夫なはずなのに、
なぜか動くのが嫌になるときがある。
僕のメイン電源が切れて、
予備電源だけがちらちら光っているような状態。
授業中、急に言葉が理解できなくなって、
ただ湧きあがる感情は、
「やめたい。眠りたい。帰りたい。」
力が出てこなくて、鉛筆を削るのにさえ苦労する。
空気がおいしくなくなって、音が交互に響く。
そんなときは、無理に笑ったりしない。
水を飲んで、冬眠するんだ。
寝ぼけまなこのクマみたいに。
目覚めたとき少しだけ新しくなれるように。
感情の雪が溶け出して、
僕の胸の内を流れ始める。
そしたら僕は街に出て、
新しい世界を発見するんだ。
いつだって笑えるわけじゃないけど、
でも風景と僕の気持ちが溶け合っている時間が
とても好きだから。
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