ベクトル/藤原絵理子
里山が消えていく
脱炭素を熱心に論じる
快適にエアコンの効いた会議室で
アルマーニのスーツを着込んで
化石燃料と気候変動の話を
ビジネスチャンスだと
ノリで上気した額をてからせながら
気持ちよさそうに喋っている
人を殺して賞賛されるのは
戦争のときくらいだけど
ごく一部の人の快適な暮らしのために
命を落としている人が
戦争で死ぬ人よりずっと多い
ニュースにはならないけどね
町のカフェの一杯のコーヒーのために
何人死んだのだろう
セレブの指や首や耳を飾るための
石ころを掘る穴の中で
どれほどの少年が死んだのだろう
そんなしみったれたことは考えない
なんと言ったって
ビジネスチャンスななんだから
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