Cut The Cake。/田中宏輔
 
だろうけど、半分くらいの男は、そうなるんじゃないかな。」と。そのようなことは考えたこともなかったので、詩人からはじめて聞かされたときには、ほんとうに驚いた。「もしも、何々だったら?」というのは、詩人の口癖のようなものだったのだが、もっともよく口にしていたのは、言葉を逆にする、というものであった。そういえば、詩人の取っていたメモのなかに、こういうものがあった。


 ヤコービは、彼の数学上の発見の秘密を問われて「つねに逆転させなければならない」といった。
(E・T・ベル『数学をつくった人びとII』21、田中 勇・銀林 浩訳)


 言葉を逆にするという、ごく単純な操作で、言葉というもの
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