詩を書くということ/ねことら
何か例えば
そういう事を言いたいんじゃなかった
光ったり遠かったり
触れられるものを大切にしたかった
古いボールペン
革のノートカバー
綴られた文字は癖があって
誰が書いたか
すぐにわかるよ
キルアンドブレイク
まだ使えるものはリサイクルボックスへ
傾斜する夕陽の角度
その千分の一を
ここの窓辺で拾っている
乗車するたびに聴く音楽
タイトルのない街
ここもエアコンが効きすぎていて
空気が薄いみたいだ
まだ歩けるけど
夜は鍵を閉めて
朝は鍵を開けて
鍵を閉めたり鍵を開けたり
そのうちできるようになっていた
寂しさを抱えたまま
何か例えば
そういう事を言いたいんじゃなかった
はじめから隣にいるけど
僕はまだ何も話し始めていない
遠く風の歌を聞くように
いつまでもフライトの
準備をしている
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