浸水/オロチねこ
1.
ゆがくように陽光が照り付ける昼過ぎに、私は横断歩道を渡っていた。
暑さで揺れ動くのが自分か、世界か、あるいは陽炎か分からなくなった頃。
コンクリートは融解して水になり
全身から流れる汗は塩となり
白線は光芒となり 水中に降り注いだ
2.
この街が海になるのと同時に
私は汗を流しきり魚になる
電信柱、家屋、踏切、電車、ワゴンカーなんかが
水辺に浮いたり、沈んだり、一定の深さで停止している
実存から抜け出し そこからあらゆる物が誕生する
夕暮れになるまで 私は泳ぎ続けた
3.
マグロ クジラ クマノミ イルカ ナマコ タツノオトシゴ
どれでもなくなった私は世
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)