故郷へ/
藤原絵理子
っていた
昔シャープだった老人は
脳内に霞がかかって春の空
部屋の絨毯の縁に躓いてよろめく
家はバリアフリー
至る所に縋れる手すりもついている
いい値段で売れればいいですね
仕方ないから白々しく言う
二枚になった舌が鼻の頭を舐める
嫌な気分の靄が眉間にわだかまる
鼻へ抜ければいいんだけど
二枚舌が鼻の孔をふさぐ勢いなので無理
ふるさとの山に向かって
不平不満をぶちまけている
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