巣穴の中で/由比良 倖
 
思い出の淡く儚いパンの匂い、空気を食べて生きて行きたい


生きている、世界はとても広いから僕の居場所もあるはずだから


中庭に舞い降りてくる星たちをふたりベッドで並んで見てた


宇宙的直感力があったはず、無意味な雨の音の向こうに


朝焼けが全ての嘘を剥ぎ取った今日という日を贈りたかった


宇宙には観測できない色がある、心がうたう虹の色とか


やまいだれ被せた文字と流れる血、身振り手振りで世界を示す


建て替えたばかりの家に火を放ち春の終わりを祝っていたい


走るのは得意でしたが海中の音をいつでも聴いていました


心拍が宇宙の果てを突き破るまでのリアルを僕にください
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