涙色の声/秋葉竹
 

 

紫色の
声が出なくなったのは、

冷気に触れた安らかな眠り薬の価値を
あらためて知ってしまって苦しんで
その罰に身を委ねてしまいたくなった
あのとき突然に、だ。

胸の中央にぽっかりと拳大の穴があき。
僕はと云えばいっぴきの鯉が
餌を食べるときにパクパクする口みたいに
窒息しそうになりながら、
酸素やなんやかんやを吸い込む作業を行う。
だけの死んだ魚みたいな涙目で、

僕の家は、光に満ち満ちて、優しくて、
挽歌の光は、いつだって、明るさのなかに、
寂しさを湛えて、キラキラ、していた、

なにかと闘うのは好みじゃ無いな。
勝ちたい感情が芽生え無ければ良かったな。

そんな想い、振り返って歌を歌ってしまう

空蝉の鴉の鳴く早朝の人気の無い街の電柱の
光はもはや灯ることもなく、

むかしのことも知らされずに生きて
歌を歌ってしまったときの
声は
三原色の明確なシナプス経由の涙色。

それが終わりの道を
踏みはずしてしまった朝の
初めての正直な涙の出来上がり風景、か。








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