雨と散歩/番田 
 
久しぶりに僕は自転車に乗ると、景色を流れた。自転車はその時の季節を感じさせる乗り物。冬の日は、僕はあまり自転車に乗らないのだとしても。夕暮れに照らされた街。日の差す角度と、それから、風の涼しさがある。電車の駆け抜ける音がした。外はもう、雨が降り始めている。午前中は晴れていた街。自転車でどこかにいる誰かに会いに行くということはしなかった。書店で何気なく経済雑誌をめくると、僕は一人、不穏な記事に不安を掻き立てられた。でも、一切そういったことをしないことが、利口な人のすることなのだと僕は知っていた。自転車は書店の景色を過ぎ去っては走った。いつもの角を曲がると、焼肉屋の匂いが立ち込めている。今は、そうは思
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