詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その2。/たま
 
いおしりは
色あせた合成皮革に吸いついている
午後の日差しは
わずかに粗い粒子をともなって
白いカーテンをゆらしている
窓の外には大きなケヤキの木があって
その梢の上にはかわいた宇宙があった
この地上に
たったひとり分の木陰さえあれば
わたしはこうして裸でいたかった
ときには犬でもなく、猫でもなく
ヒトでもない
まるで
西瓜のような生きものでしかないわたしを
たしかめてみたかった
階段のしたで眠る
ちいさな犬をまたいで二階にあがる
廊下をかねた二畳ほどの板間の小窓から
蒼い稲穂の波打つ海が見えた
ささやかな営みをのせて
季節をわたる箱舟がたどりつく港は

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