詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その2。/たま
 
、浅い夢をわたり歩いては
拾いあつめた空き瓶の
青く、赤く
澄みきった記憶の
わずかな香りを手にしたまま
夢の入口に立ち尽くしては、濡れていた
長い雨だとも知らず
犬のように
四つ足のまま
ここにはいないはずの、恋人や
ここでは叶うことのない、わがままを
どこまでも、追いかけていたいわたしは
きっと
雨の日の犬にちがいなかった
晴れた日の記憶はすでに
止めどなく霞み
芯まで濡れたこのからだを乾かさなければ
やさしく老いることもできない
だから、もう
浅い夢をわたり歩くのは、やめようとおもった
雨の日の猫のように
明かり窓のある家の
乾いた木の階段のてっぺ
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