詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その2。/たま
 
カーから、水道ホースを引きずり出して、まず男子トイレの小便器に水をかけることになる。男子と女子トイレは入口をはさんで右と左にあって、背中合わせだから行ったり来たりできたが、十メートルはある曲のわるい水道ホースを握りしめて、わたしは文字通り右往左往することになる。
 男子トイレの小便器のほとんどは、センサーが壊れていて洗浄水が出なかった。それもあってかアンモニア臭がひどく、サンポールをぶっかけて小便器を擦るまえに水をかけるのは、アンモニア臭をいやがる中川さんの指示だった。わたしはそれほど臭いとは感じなかったが、中川さんがそれをいやがるのは、やはり女だからだとおもった。小便器の数は十ほどあってわたし
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