詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その2。/たま
 

まだとおくても
いま、この海に
捨てなければいけないものがあるとしたら
わたしはなにを捨てるだろうか

洗いざらしの生あたたかい衣服を身につけて
ちいさな犬と、散歩にでかける
日にやけたアスファルトの
雑多な小径は
いく日も降らない雨をおもい出そうとしては
とおざかる意識をつなぎとめようとしていた
よく手入れされた畑の
心地よい表情や
人の手をはなれた田畑の
夏草に埋めつくされた投げやりな視線のなかを
ちいさな犬と歩く
浅くても、ふかくても
この地上にひとつとして
無駄な眠りはない
ちいさくても犬のかたちをしたおまえは
犬のしあわせを手に入れたか
恋はし
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