Sat In Your Lap。I/田中宏輔
 
の犬の魂の一部分が共存する領域を設けなければならないと思われるのだが、そういうふうに思われないだろうか。

 ここで、また、このようなことを思いついた。犬といった、多少は知恵のありそうな動物だけではなく、海といったものや、言葉といったものも、自分が自分であることにうんざりするというようなこともあるのではないかと。「海が海であることにうんざりしている。」とか、「言葉が言葉であることにうんざりしている。」とか書くと、なんとなく、海や言葉が人間のように考えたり感じたりしているような気がしてくるから不思議だ。これは、もちろん、わたしが、海や言葉といったものに、わたしの気持ちを仮託して感じ取っているのだ
[次のページ]
戻る   Point(5)