詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
マリアへ
ね、きれいでしょう……?
踊り子は楽屋のソファに胡坐をかくように両膝をたてて
物憂い女陰をひろげて見せた
ラッパの福ちゃんは太鼓腹をきゅうくつそうに折りたたんで
ひたいに汗を滲ませて真正面から覗きこんでいた
はたちのころの、ぼくの視力は二・〇
一秒でも見つめたらすべてがひとみの奥にやきついた
まだ熟しきらない淡いピンクの無花果を
両手の親指でひき裂いたようなかたちして
そこは
出口なんだろうか、それとも
入り口なんだろうか
ひくい天井の蒼い息をはく蛍光灯のしたで
だるそうな、踊り子の体温さえ感じたけれど
ふしぎとセックスの匂いはしなかった
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