もうすぐ百の猿になる。/田中宏輔
ジャン・ジュネの『小さな真四角に引き裂かれ便器に投げこまれた一幅のレンブラントから残ったもの』にある、「ある日、客車のなかで、前に腰かけていた旅客を眺めていた私は、どんな人も他の人と等価であるという啓示を得た。」「人はあらゆる他者に等しい、」「各人が単数の、複数の他者である。」「誰もが私自身、ただし、個別の外皮に隔離されたわたし自身だったのだ。」(鵜飼 哲訳)といった文章を読んでいると、一八七一年五月にランボーによって書かれた、ポオル・ドゥムニー、ジョルジュ・イザンバアル宛の二通の手紙のなかにある、「我とは、一個の他者である。」(平井啓之訳)といった言葉が思い出された。そのときには、「誰もが私で
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